「ブラボオ、ネネム裁判長。ブラボオ、ネネム裁判長。」
ネネムはしずかに笑っておりました。その得意な顔はまるで青空よりもかがやき、
上等の瑠璃よりも冴えました。そればかりでなく、みんなのブラボオの声は高く天地にひびき、地殻がノンノンノンノンとゆれ、やがてその波がサンムトリに届いたころ、
サンムトリがその影響を受けて火柱高く第二回の爆発をやりました。
「ガーン、ドロドロドロドロ、ノンノンノンノン」
それから風がどうっと吹いて行って、火山弾や熱い灰やすべてあぶないものがこの立派なネネムの方に落ちて来ないように山の向こうの方へ追い払ったのでした。ネネムはこの時は正によろこびの絶頂でした。とうとう立ちあがって高く歌いました。
--- 『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』 / 宮沢賢治